福祉の積み重ね

奈良は正倉院展が終わり、金色に包装されたポインセチアの赤が年の瀬の慌ただしさを伝えてくれています。数年前まで奈良の夜は店じまいが早いと言われていましたが、今では多言語の方たちが訪れるようになり夜遅くまで商店街も賑わっています。
障害者の就労支援もこの時期から来春に向けて忙しくなります。利用される皆様の気持ちが前向きになり、日々訓練を受けて成長した自分を見つめる良い機会になります。それぞれに得意な分野を探し出し、就職先を絞り込むようになるので、一段と頼もしくなり、その度に障害者福祉に関わることの感激を覚えています。
最近、障害福祉への思いや支援の仕組みを多方面でお話する機会をいただくようになりました。その効果もあり、多くの方が施設に見学にお越しいただくようになりました。一般就労を目指す就労移行事業では訓練プログラムの内容や期待する成果を体系的に説明し、また実業務で働くことを実感できる就労継続事業では、農業や製造業などの既存の業務から、パソコンを活用したデータ入力や制作及び未来型の遠隔ロボット制御やAIを活用した福祉支援など新たな仕事も紹介しています。
このような活動が循環して、全国の福祉関係者から講演依頼をいただき、6月から東京、大阪、名古屋、広島、宮崎にお招きいただきました。また11月16日、17日は「全Aネット就労支援フォーラム」で仙台にお伺いして“健全なA型事業を目指して”をテーマに、福祉事業の現状と未来図とそれを担う職員の育成法について講演をさせていただきました。
15年前に障害者福祉に出会い、奈良県内の福祉施設を見学させていただいき、障害者の位置づけがあまりにも受け身で画一的あることに疑問を感じて、私のようなものでも何かお役に立つことがあるかもしれないとの思いで始めた福祉事業が、年月と共に体系的にまとまりを持つようになりました。そこで得た小さな知識や経験を積み重ねてきたことが皆様にお話しできるものに育ってきたと実感しています。
今までの福祉支援の積み重ねにより、新たにテレワーク就労やアバター就労として本格的に始めることができました。日々の活動がさらに未来の福祉の可能性を広げることになります。これからも皆様のご理解とご協力をお願いいたします。

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未来の働き方

いよいよ正倉院展が始まり奈良の秋本番です。1300年を超えて宝物が管理され、現代によみがえる姿に、奈良時代にこれだけ精度の高い工芸品を作る技術があることの驚きと感動が湧き上がります。
障害者福祉の分野も日々、あれやこれやですが制度としては2年後に大きな改定がありますので、そのための検討会等が実施され、その報告が厚労省のHPに掲載されるようになりました。基本的なことになりますが、福祉制度に民間企業と同様の成果主義を取り入れるかどうかについてです。前回の改正で、福祉事業所が利用者に支払う工賃額や企業就職した人数によって、国から支給される支援費額を決める成果判断が示されました。
平成18年に障害者自立支援法が制定され、のちに総合支援法になりましたが、その趣旨は、障害者も働き経済的に自立した生活ができることになりますが、福祉関係者はそれを実現できるサービスを提供するようにとのことです。この具体的な課題として、支払う工賃の向上や就職者数が対象になりました。しかし今でも長く障害福祉に関わっている福祉事業者では、シェアの概念が一般的です。事業所で働き得た利益から工賃が支払われるのですが、多くは総利益を利用者数で割り均等に配分しています。長く働く方も、少しの時間しか働けない方も、また生産能力が高い方も低い方も同額になっています。
民間企業では、組織があり、役職が決められ、業務が分担され、個人や部署の成果に応じて利益が配分されますが、福祉事業所の利用者は、組織も役職もないのが一般的です。主な理由は障害の程度にあります。障害認定が働く能力に準じてはいないのですが、障害によっては働くことに制限が加わることがあります。常時通勤できない方、特定の作業ができない方、安定して長時間業務を遂行できない方、文章や数字などの理解に課題がある方等、障害特性と労働との関係は多様になります。またその日の状況によっても働く能力が変わることもあります。
このようなことでシェア概念が定着したのですが、新たな制度ではその考えを尊重しながらも、個人やチームでは、相互にできないことできることを補完し、協力することで生産性を高めることができるとの見解です。障害者福祉の就労支援は個々の障害特性を正確に理解し、それに応じて業務や時間、職場環境などを決める必要があります。この働き方が未来の日本の働き方になるような気がしています。少子化、IT化で個人の尊厳や思いが主になると企業に合わせた働き方から、労働者に合わせた働く環境を提供することが企業に求められるようになります。
障害者福祉の就労支援の現場にはその可能性に取り組んでいる意識が生まれています。最近、ぷろぼのに見学に来られる方が増えたのも、このような気付きがあるのかもしれません。

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災害に学ぶ

奈良の秋は中秋の名月に始まり、正倉院展で締めくくるのですが、今年は大きな台風が2度も上陸して、各地に大きな被害をもたらしています。例年のように、すすきの穂の向こうに満月を愛でる風流はどこかに飛んでいきました。被災された皆様に心よりお見舞いとと早期の復旧をお祈りいたします。
1997年に京都議定書で地球環境について各国の意見の取りまとめとCO2削減の方針が決められてからすでに20年が過ぎました。専門家によると地球温暖化の大きな原因は二酸化炭素であり、その排出を極力抑えることの重大さが示されました。報道によるとアラスカやシベリヤの氷河やツンドラ地帯の永久凍土がこの数年で大規模に溶け始めています。北極地域の氷河は地球の温度調整に大きな役割があると言われています。この状況を目の当たりにしてもなお、各国は自然に優しい天然エネルギーへの代替よりも、産業を優先して、環境に配慮した取り組みはさらに後退しているようです。 東日本大震災と大津波後に、政府は予想をはるかに超える災害との判断から、早急の対策を表明しましたが、未だに大規模な災害対策のみが行われようとしています。防潮堤はさらに高くなり、河川の堤防は強固になり、治水対策としてダムが作られています。一時的にはこのようなインフラ整備も必要だと思います。しかし近い将来に地球環境が悪化し、想定を超える災害が発生する可能性があるとの報告を見ると、根本原因の是正に取り組む大切さを感じます。 スウェーデンの高校生環境活動家のグレタ・トゥンベリさんは、先日、国連の環境委員会で“未来は若者のものであり、高齢の政治家が未来を不安定なものにすることを黙認できない、あなたたちを許さない”、と主張しました。今までの政治や産業及び軍事力を背景にした勢力構造に対して、地球は人類も含めて生息する生き物みんなのものであり、一部の国や政治家が好き勝手にしていいものではないことが明らかにされました。 その輪がSDGsによってさらに大きなうねりになり、CO2排出の当事者である企業でも環境取り組みを公表するESG投資のプラットホーム整備が進んでいます。福祉も同様に、障害のない方や高齢でない方が決めたる仕組みから、当事者である方たちが意見を伝えて、希望に沿った内容にする活動が始まろうとしています。ようやく日本も障害者権利条約批准したこともその一歩になります。 私たちは日常の忙しさで、いつのまにか足元の大切なことを見過ごしそうになります。誰かに任せるだけでなく、自らも考え、行動し、新たな可能性を追い求める、この時代に合う価値軸を作り出すことを期待したいものです

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挑戦的学び

先日、奈良の福祉及び就労支援に関わる人たちと、障害のある学生を支援する第3回連続講座を開催しました。奈良県大学連合様や奈良大学様の協力を得て、大学と専門学校の学生支援担当の方にお越しいただき、状況や課題について報告いただきました。多くの方に参加いただきましたので、登壇者と意見交換ができるように、スマホで専用サイトに講演や報告について、意見や質問を書いていただきました。通常は講演後に会場から挙手で質問をいただくのですが、今回は講演中から自由に意見を書いていただきました。
質問には、大学などの受け入れ体制や入試や授業の支援など具体的なものから、学校+福祉+医療+労働が連携した講座でしたので、地域の支援体制への期待や感想及び懸念まで多岐になりました。時間の関係ですべての書き込みに回答できませんでしたが、その後のアンケートから、スマホで自由に意見を書くことができる企画を評価するものが大半でした。今の人たちがスマホを生活の多くの場面で活用されていることを新ためて感じました。
ぷろぼのは、障害者の就労を支援していますので、職員にいくつかの学びをお願いしています。障害福祉や就労について知識を得ることは当然なのですが、それに加えて、IT系のスキルの向上も目指しています。この福祉とIT知識の両方を習得する取り組みを実践して、意外と職員には大変なことなのだと分かってきました。確かに福祉はアナログであり、ITはデジタル・論理性なので、考え方に違和感や戸惑いがあるのかもしれません。“パソコンは苦手、Webも難しい”意見も聞きますが、一方で中高生の大半がスマホを持ち、実に巧みに使いこなしています。世代の違いなのかと感じながら、それでも最低限の操作や理論は分かってもらいたいと期待もしています。
人はいくつまで挑戦的な学びができるのだろうか、新たな出会いにいつまで驚きと感動で気持ちを高めることができるのだろうか、永遠で会ってほしいとの思いから、方針に“下学して上達する”の一文を加えています。これは身近なことを日々努力することで、その先にある大きなものを知ることができる。の意味ですが、挑戦的学びにはこのような思いを込めています。
障害者福祉の就労支援は難しい課題が日々満載ですが、それを新たな知識や体験の出会いと捉えることが大切になります。福祉を知り、人を知ることで他のすべてのことが魅力的になることを期待したいものです。

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災害から

大型台風が首都圏を直撃してからすでに10日が経過しました。千葉県ではまだまだ被害の全貌も分からず、ライフラインの復旧も大幅に遅れています。ニュースによると停電の長期化で養殖の伊勢エビやアワビが死滅したことや名産で収穫期を迎えていた梨や落花生にも大きな被害がでて、例年を大幅に下回る出荷になるとのことです。一方障害者施設でも、アイスクリーム製品を製造している施設では、停電で温度管理ができなくなったとの報告があり、また胡蝶蘭などを生産している施設では、エアコンが使えなくなり、これもおおきな打撃を被ったとのことです。
このところ地震や台風などで九州や中国地方で大きな災害が出たとの報道がありますが、まさか首都圏でこのような大規模災害があり、しかも復旧が長期化することは想定されていなかったように感じています。最近よく聞かれる「想定外」の出来事が頻繁に起こることにどのような対策を講じればいいのか悩むところです。
もし奈良でこのような事態が生じたときに、自家発電の設備はどうなっているのか、水道が止まった時に飲み水や生活用水はどうすればいいか、屋根が破壊された家屋で修理できるまでどのような暮らしができるのか、また病気によっては日々の治療が必要な方もいるので、医療機関の復旧までどのように対応すればいいのかと事前に想定することは多々あります。ぷろぼのでは新大宮本部に数トンの生活用水を備蓄していますが、発電装置やその他の食料品や衣料、寝具はまったく足らないのが現状です。
また、我が家でも災害対策としては、少しの飲料水と缶詰などの備蓄しかしていないのが現状です。仮に電気と水道が止まり、屋根がなくなる被害があるとたちまち大混乱になります。人は自然に対して無力であることは十分にわかっていても、いつのまにか科学技術を過信し、公共工事などの対策があればどうにかなるとの期待を抱いてしまいます。“私だけは大丈夫”との神話を意味もなく妄信しています。
福祉施設は災害時の一時避難施設の役割を担っています。障害がある方が一時的に非難し過ごすことができる場に指定されています。それでも制度として備蓄品の量や設備環境に詳細な規定はないので、自主基準を定めて対策を講じるしかありません。ただ私どもだけでできることなど知れていますので、このような機会から地域の福祉施設との連携を日ごろからしておくことで災害時に迅速な対応ができると考え準備を進めていきます。

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