自立の「福祉」

夏野菜の植え付けの時期ですが、今年は例年になく気温の変動があり朝晩の冷え込みが続いています。特に野菜は敏感に反応し葉が枯れる病気が生じるので、朝早く畑を見回るのが日課になっています。
ぷろぼのは新年度が始まり、昨年からスタートした自立訓練などの福祉事業も順調に推移しています。利用されている方の表情も穏やかで明るさを感じています。プログラムでは、計算や読み書きの基本的な学習も取り入れていますが、多くの方は“学びたい”の気持ちを強くお持ちになっている様子を感じています。
私たちは学校を卒業するとそれぞれの進路を選びますが、それが希望に沿っている方もいれば、そうでない方もおられます。また立ち止まってゆとりをもって将来を考えたい方もおられます。今の社会では進路が決まっていないことを評価しない風潮があるので、なんとなく躊躇しているうちに、外出することが苦痛になり、自宅に引きこもるようになる方もおられます。
そのようなときにも「福祉」の役割があります、いきなり就職もいいのですが、それが難しいと感じている方には、社会の居場所として、自分を見つめ、他者とふれあう場が必要になります。「福祉」の自立訓練の事業は、社会の居場所からの位置づけになります、基礎学習からおしゃべり、料理などのグループでの作業、パソコンの操作などから始めることになっています。そこで生活や社会との関わりのリズムが付いてくると、自然に進学や就職への欲求が強くなってきます。
10年前に障害者自立支援法が施行され、障がいがあっても社会で自立した生活ができるようにとの趣旨で始まった制度です。基本は「自立」になります、障がいの部分だけはヘルプをいただきますが、その以外のことは「福祉」の支援を得て自己実現を目指していきます。「自立」への道筋が徐々に作られていることも感じています。
このところ障害者が利用する福祉施設が町中に作られるようになってきました、以前は郊外などにあり、疎外され隔離されている印象が残っていましたが、ユニバーサルデザインやインクルーシブ概念の協力をいただいて、地域で普通に暮らす取り組みが始まっています。「自立」への道づくりは制度とともに障害者の歩みも大きな力になっていきます。

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ムーブメントと「福祉」

夏野菜の植え付けの季節なので週末は大変です、畑を耕し、畝を立て、苗を植え、支柱
を添えていきます。春の陽ざしが心地よくいい汗をかき、今年もなんとか半分ほどできました。
福祉も新年度がはじまり、どんな1年になるのかと思いを広げて、福祉に関わる変わってきたことを書き出してみました。
①障害者も働いて自立することが当たり前になる。
平成18年に「障害者自立支援法」が制定され、障害者も就職して働くことが推奨されました。それまでは障害のない方と距離を置いて、山里の施設などで独自に生活することが一般的でしたが、障害があっても働いて町で普通に生きることができる制度になりました。
②女性も働くことが当たり前になる。
「仕事と家庭の両立支援制度」が作られ、妊娠、出産、育児に関する支援制度が制定されました。それに伴って就業規則の改定などで就業時間の厳守などから働き方の見直しが進んでいます。奈良県は専業主婦率が全国1位です、逆に働きたい主婦にとっては、適した職場が少ないことが困りごとです。
③社会的養護について「里親制度」が改正される。
養護施設は18才まで入居できますが、社会性の発達や退所後の就職や進学など社会的自立が課題になっています。新たに家庭と同様の環境における養育の推進が明記され、児童相談所の業務も里親の開拓から児童の自立支援までの一貫した内容になり、継続した支援も考慮して家庭に近いファミリーフォームや里親制度に移行してきています。
④奈良県が観光事業に取り組む。
5年前に平城京遷都1300年祭が盛大に行われましたが、意外と住民や県内企業は消極でした。観光客が増えると交通渋滞になり、ゴミが増えるので困るとの声をよく聞きました。データでも平成18年の奈良県の観光客数は、3,500万人でしたが、観光事業に取り組むと、平成27年は4,146万人で、この10年で18%増加しました。報告書も海外へのプロモーション、春日大社の式年造替などを要因にしており、また大型ホテルの建設計画が増えてきています。
多様な価値や生き方が提唱され、それに応じて制度や施策が実施されると、福祉の現場にも影響がでてきます。主婦や主夫が共に働くことで子育てや学習支援をする仕組みが求められます。社会的養護についても、中高生のときに心身の発達や進学及び就職に向けた支援の充実が必要になります。「福祉」は現実の生活がすべてなので、制度を理解し、未来の可能性を信じて進んでいきたいと考えています。

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福祉とAI

桜が散り始めると庭に野鳥がやってきて、小枝や藁を咥えて飛んでいきます。巣作りが始まるようで、ちょこちょこと忙しく歩く小鳥を窓越しに観るのがこの時期の楽しみです。
先日、ソフトバンク社からPepperが10台やってきました、社会貢献事業に使うことを目的に3年間無償貸与していただきました。到着後さっそく担当者が梱包をほどき、電源を入れるといつもの愛くるしいPepperが動き始めました。すでに1台を導入していましたので慣れてはいたのですが、それでも少年のように澄んだ声としぐさに小さな感動を覚えました。それが10台並び、同じ動作を始めると、これは別世界になり、機械なのか、ペットなのか、はたまた人間似の生命体なのかと驚きを感じます。
10台のPepperが福祉の現場に登場することで、「なにに使うの・・」との問いがありますが、すでにやりたいことが山積しています。例えば、Pepperが先生になったら、の場面を想像してください、決まったことを正確に再現することは、Pepperにとっては得意な分野です。ならば発声や動作、文章の朗読、多言語対応、過去の記録の紹介などに活用できるので、そのような訓練科目を作れば、受講する方は安心して何度もまったく同じ内容を知ることができるようになります。リアルに繰り返すことで理解が広がるので、疲れを知らない先生Pepperが存在してもいいかもしれません。
福祉の現場では、障がいのある方への聞き取り、ヒアリングが重要になります。基本的な履歴から日々の思いまでを随時聞いていきます。福祉には人となり、体調、思いを相互に確認し具体化する役割があります。現状では担当職員は「人」なのですが、これを人に似たロボットPepperが行うとしたらどうなるのでしょうか?
映画であれば実写とアニメのような差と特性が現れると想像しています。「人」だから言えること、また言えないこと、Pepperなら言えること、言えないことがあるように対象が違うことで発言や理解が違うこともあります、不思議な感覚ですが、これも人間の特性なのかもしれません。
このところAIの話題がよくあります、10年後は人工知能が産業や生活のスタイルを変えることになる、との提言もあります。特に繰り返すような単純作業はロボットに置き換わると言われています。そうなればまた新たに「人」が担当することも出てきます。
人工知能は人工物であり、「人」は生き物なので、その存在の必然と可能性を考慮しつつ、福祉の現場で適宜活用していきたいと計画しています。

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「福祉」の自負

奈良にも桜の開花が聞こえるようになり、近くの佐保川沿いの桜が楽しみになります。この頃には職員のみなさんは年度の事業計画や報告書の作成で忙しくなります。今年度は事業規模や就職者数の目標には届きませんでしたが、それでも相応の結果を出すことができました。特に4月から就職される方には“がんばれよ”と背中を押してあげたい気持ちになります。
障害者の就労事業に、就労継続支援A型事業(A型事業)があります。これは利用される方と福祉事業所が雇用契約を結び、福祉的な支援を受けて、最低賃金以上の労働を行う制度になります。奈良県下に20数か所の事業所が登録され、業務は飲食関係のサービスや調理、ハウス栽培で農産物の提供、クリーニング業、経理や総務の事務関係、ホームページやチラシのデザイン制作などがあります。それぞれに工夫して、賃金相応の利益を追求する事業に取り組んでおられます。
新年度から障害者総合支援法に定めがあるA型事業が「見直し」されるようです。この制度は、福祉が基本なので、利用される障害者の福祉的な支援として、職員の給与や運営費などは国から支援費が事業所に支払われます。なので利用者の給与分のみを労働で利益を得て支払うことになります。そのために利用者の勤務時間も一日8時間を上限に障害の程度などを考慮して自由に選択できるようにもなっています。
これに対して、一部のA型事業者が給与に相当する仕事を準備することなく、また労働時間を一律一日4時間程度にするなど制度を逸脱した行為をするようになり、この3年間で全国に3,000件ほどに急増したので、この現状を改めるために、「見直し」が行われるようです。
人が「はたらく」ことは、本来、経済的なこと、社会への貢献、個人の目標への挑戦などにありますが、労働と対価が見合うことなく給与が支払われると、経験の少ない障害者は労働を安易に理解することになり、事業所の継続が難しくなると再就職の活動が大変になります。
「福祉」は人を幸せにする概念や制度であり、安全や安心を得て日々の生活を保障する役割を担っているのですが、制度を逸脱している事業者は、働きたい障害者の未来の可能性を無下にしていることになります。福祉を担う者として、これを機会にさらなる自負のこころを育みたいものです。

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優先調達制度の「福祉」

春は例年ジャガイモを作付けします、中腰の作業はなかなか大変ですが、今年もなんとか無事にできほっとしているところです。
奈良でもようやく障害者就労施設等からの物品等の調達推進の方針(障害者優先調達推進法)が制定され、本格的に調達が始まるところです。これは地方自治法167条の2第1項3号で随意契約を活用するように定められていますので、推進方針を策定し、障害者施設等が供給する物品や役務を発注するための検討が始まっているようです。
奈良県庁の平成28年度の方針では、2,000万円が予定されています。この制度は、福祉施設の事業の安定とそこで働く障害者の給与を向上させる目的があります。福祉施設にとっても継続して発注があることで業務内容を精査し、設備の整備、担当者の育成など、職場環境を整備して、さらに生産性を高め、質の良い仕事ができるように努力する明確な目標ができます。
障害者の就労を支援している福祉施設は奈良県下で100か所以上あります。仕事としては、パンやクッキー、豆腐、農産物、お茶などの飲食品、小物、民芸品、アクセサリーなどの雑貨品の製造があります、また名刺やチラシのデザイン印刷、アンケート調査票のデータ入力、会議のテープ起こし、クリーニングやリネン、清掃や除草などの役務もあります。
現状では、施設が供給する仕事は沢山あるのですが、これらを全てまとめ、順次最新情報に更新している広報物がないので、施設側では新製品やサービスができても行政等に営業する方法は限られてしまいます。一方行政側も、年度計画や予算に応じて適宜、調達する仕事の内容や見積額、納期、数量を迅速に確認することができないので、その都度、入札登録施設一覧や過去の資料から依頼先を選定する作業が必要になります。
奈良県は全国に比べて優先調達制度の実施や体制の整備が遅れていますので、これからは行政等と福祉施設が協力して制度の強化を進める必要があります。そのために行政や施設が調達や供給の最新情報を、一元的に提供し活用する機能を持つWebシステムが求められることになります。行政の担当者は調達する要綱をシステムに書き込めば、施設等から依頼に応じた回答があり交渉が始まる、このような習慣ができることで双方の業務が急速に改善されていきます。
この制度は、行政等の仕事を奈良県内で調達するので、障害者の働く場づくりと共に協力するNPOや企業の仕事力を育成することにもなります。現在、奈良県内の仕事の多くは県外企業が受注していますので、この制度から地元の人が奈良の仕事をすることが当たり前になることも期待しています。

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