色とりどりの1年

昨年7月に人に優しい職場空間を求めた木造福祉ビルFellow ship centerの竣工式をさせていただいて、早いもので1年が経過しました。その節には多くの皆さんにお祝いのお言葉やお気持ちをいただいたことを改めてお礼申し上げます。
1年が経過した木造ビルは、日々、多彩な表情をしてくれています、心ばかりの屋上庭園の木々は大きく枝を伸ばしています、また外観に貼り揃えた檜の板は四季の陽光が当たり少し濃さを加えよい色合いになってきました。また内装の杉の赤目板は芳醇な香りを振りまきながら色白になってきています。
木の建築物の良さなのでしょうね、日々の光や雨風、温度などの自然の刺激を無理せずに上手に受け入れているようで、寒ければ寒いなりに、暑くなればそのように、私たちに快適な空間を用意してくれています。
5階建てビルの5階フロアーは、皆さんにお使いいただけるセミナースペースでこの1年で多くの方にご利用いただきました。福祉関係はもとより、建築関係、環境団体、起業セミナーなども行われてきました。中でも東北の震災被災者の方にお越しいただた絵画展は、障害のある方がその目で惨状を見据えた作品を木の空間にイーゼルを立て展示することで、多くの広がりを与えてくれた印象をいただきました、感謝です。
1階の食堂はもう大変なことになっています、地元の食材を使ったランチメニューは素朴な味わいを醸し出して連日用意したものがなくなるほどの盛況をいただいています。夜は夜で居酒屋に変身し、いつの間に集めたのでしょうか、奈良の貴重な地酒たちが地元の皆様に人気をいただいています。お酒の発祥地、奈良の生酒が70種類ほど、色とりどりのラベルを付けた一升瓶たちが冷蔵庫に鎮座しています。暑い夏に辛口でフルーティーな冷酒はやみつきになってきます、お猪口よりもワイングラスで似合う一杯になり、女性の方がお一人でも楽しく過ごせる空間になりました。夜が更けるとおしゃべりと音楽、それから名物・・職員がさらに場を盛り上げています。ここでは数人の障害のある方が働いています、調理、接客、片付け、献立、仕入れ、会計などすべてを段取りよく進めてくれています。
歳月がいつのまにか建物と人を調和させ、交じり合う人たちの話し方や振る舞いも自然になり時間も穏やかに流れているように思えてきます。木の空間が導いてくれるままに、素直に生きる、これがいいようです。

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「福祉」とビジネス手法

先週、岡山県倉敷市で手広く障害者の就労を支援する福祉サービスの就労継続支援A型事業(福祉A型事業)を行っている一般社団法人が、突然に今月末で事業所を閉鎖して、そこで働いている220人の障害者を解雇するとの予告を発表しました。報道によると、この法人が運営する5事業所は当初より就労事業は赤字であり、国から給付される公費を頼りに運営していたとのことです。
この福祉A型事業制度は、2本立てになっていて、①就労支援事業として、仕事をして収益を得て給与を支給する事業と、②福祉支援事業として、障害者が働くうえで必要な生活面や社会性についての対応や障害についての認識や職場での配慮事項の取り決めを行う福祉的な事業があります。事業所には利用定員に応じて福祉的な専門性を有する職員を配置することになっており、その職員のために公費が支払われています。
今回、問題になっている点は、①の就労事業での収益が赤字であることです。仕事は農業や漁業ネットの補修などの軽作業のようで、事業自体に最低賃金以上の収益性が見込まれない廉価な仕事しか準備できなかったことにあります。
就労支援事業が赤字なのに“なぜ”これまで事業を継続できたのかは、②の福祉支援事業を担当する福祉職員のために支払われている公費を就労支援事業に転用したことにあります。本年1月に厚労省から福祉A型事業所に対して、①の就労支援事業は独立採算会計を指導しており、②の公費を①に転用してはいけないと具体的な事例を引用して通達が出ています。
本来、福祉A型事業は、障害者が一般企業での就労が難しく、福祉的な支援があれば一般の方と同等の生産性を上げることができる、そのような方に働く場を提供することが主旨になっています。また将来、企業の環境が整備されることがあれば、一般就労ができるように日々、実践の仕事を通じて職業能力を向上させる取り組みをすることが求められています。
この数年で福祉A型事業所が全国で3,500件以上に急増した背景には、この福祉事業を悪用して利益だけを追求する事業者と“制度ビジネスを推奨するコンサル”がいることも大きな要因になっています。彼らは“儲かるからやっている、儲からないのであれば撤退する”、ここには福祉的な理念も思いもないように感じます。
障害者総合支援法は、障害者が可能であれば就労による経済的な自立を目指すためのものですが、配慮ある福祉制度が今回のような未熟なビジネス手法や行為によって、誤解を生じてしまうことを危惧しています。この機会に自治体等の公的機関と協力して福祉制度の適正な運用が推進できるように頑張っていきますので、皆様のご理解とご協力をお願いいたします。

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福祉は長い付き合い

先日来、九州をはじめ全国でゲリラ豪雨が発生しました、犠牲になられた方や被災された方にお悔やみとお見舞いを申し上げます。数年前に奈良の南部地域でも悲惨な豪雨災害がありました。気象庁はその度に観測史上初めての、予測できない事態との報告をされます。それほどに自然の力は人が計り知れない雄大さと瞬発性を持っていることを感じる機会になります。教訓から人はけっして自然に抗うことでなく、上手に付き合っていく術を学ぶべきだと感じています。
「ぷろぼの」では、このところ職員の結婚の報告が相次いでいます、11年前に法人を作り採用を始めたときから、いずれは彼らが結婚して奈良で家庭を築いてくれることを願っていました、「ぷろぼの」にとって職員の皆さんが、人生の多くの時間を一緒に歩んでくれることが最大の喜びなので、ようやくその時が来たことに感謝しています。
先日、長く奈良で会社経営をされている方から、社員の子どもさんが成人し自社の採用試験に来てくれたとの報告をお聞きしました、とてもうれしそうに話されていたことを思い出します、「ぷろぼの」も、結婚された職員のご子息が、成人しここで働ことを希望してくれることを楽しみにしたいと思います、そのためには、彼らに選んでもらえるような福祉施設になれるように頑張っていきます。
少し前の日本には「職住近接」がありました、これは自宅と職場が近いとの意味ですが、私の田舎では工場に勤めている方は数キロほどの距離を自転車で通勤していました。それがいつの間には、電車が整備され、自家用車の普及と共に「職住分離」になり、不動産の広告にも“都心に通勤1時間圏内で最適”、などの表現がされるようになり、満員電車や道路渋滞を克服して通勤するガンバル社員像がつくられました。
奈良も多くの方が大阪や京都に通勤され、郊外型住宅地になっていますが、高齢化が進むにつれて、定年後は地元で働くことを選ぶ方、育児が一段落された主婦の方や卒業した若者も地元での仕事を希望する方が増えてきました。
福祉はこのような方が快適に働くことができる職場になります、業務も介護だけでなく、就職に向けたPCの指導、コミュニケーション訓練、就職先の企業との調整、体調管理、メンタルサポート、農業指導、食堂運営など、多彩になっています。福祉は地域で最も大切な事業なので、今後もみなさんが地元の福祉で働きたいと希望してもらえるような活動を推進していきます。

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共存の主体

奈良にもようやく梅雨が来てくれました、春に植え付けた野菜も安心して芽葉を伸ばしてくれています。6月は体が暑さに馴れ、汗のかき方を思い出させてくれる大事な時期になります。
先日から障害福祉も次年度からの制度改正に向けた審議会が開催されています。主に現制度の課題と対策になりますが、中でも給付費の改定は大きな取組になります。福祉は一般職種に比べて給与が安い状況です、そのために都度、処遇改善の処置がとられますが、それでも生涯年収は低くなります。近年、処遇改善の方針として福祉事業者の質の向上が挙げられています、例えば、福祉資格を持つ専門職員の配置や就労系では一般就職者数や就職後の定着率が、また働く場では、目標賃金額の達成率で福祉事業の成果を判断するようになってきました。
障害福祉制度のテーマは、「自立」なので、就職することでの経済的な自立、働き定着する自立、また高齢化や障害の程度に応じた生活面の自立など、各分野の充実化が進められています。障害のある方もない方も共に加齢によって生活環境が変わります、若いときは両親や祖父母から支援を受けることができた方も、加齢により逆に両親や祖父母の介護を担うことにもなります。その時のために自立と自律の準備が必要になります。
私たちの生活では、障害福祉制度による支援と共に、地域での取り組みも大切になります。先日、暮らしや地域について検討するワークショップを開催しました、昨年大賞を受賞したDesign@communities Award コンソーシアムの第3回目の伴走WSを奈良と東吉野で開催しました。テーマは「粋人シェアハウス」として、多くの方がともに暮らし働く家や町について意見交換をしました。
障害福祉制度を活用した取り組みをしている、社会福祉法人わたぼうしの会の「福祉ホーム有縁のすみか」を見学し、午後から専門スキルを持ち田舎暮らしをしている若者たちがいる東吉野OfficeCampに伺いました。参加者は奈良から10名、東京から10名ほどで多彩な専門家が集まりました。
暮らしと仕事、人と自然との交わりなど事例なども参照しながら、意見を体系化するチーム、河原に降りて木々を集めて共同作品を作るチームなどがあり、夜遅くまで活発な交流が広がりました。
制度で生き方を定義して標準化する公的なものと地域の実情やその時の思いや状況に適応する民間的なものがあり、互いに区別することもなく暮らしに浸透させる共存性について学ぶ機会にもなりました。現代における共存の主体は「福祉」になるのでしょうか。

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ライフステージの福祉

奈良の梅雨はしばらくお休みのようで快晴が続いています、背丈まで伸びたキュウリやトマトも水をほしがるように葉を広げているので、毎朝の手入れも大切になります。
障害福祉の現場では、成人後の社会参加や就労に向けた取り組みがありますが、生後すぐには1歳6か月と3歳児の健康診断があります。1歳6か月健診は、身体発育、精神発達の面で歩行や言語等の発達や運動機能の診断項目や視聴覚、精神発達の遅滞、障害の早期発見があり、3歳児健診は、視覚、聴覚、運動、発達等の障害、疾病及び異常の早期に発見と発育、栄養、生活習慣に関する指導を目的としています。先天性の知的や発達障害はこの時期に発見することで進行を防止することにもなります。
ぷろぼのが行う福祉支援は、ほぼ中学2年生からになっています。放課後等デイサービスを使い、主に中高等部の生徒の社会性の育成に取り組んでいます。この時期は学校と福祉の両方を利用されるので、双方で情報の共有や支援の連携の必要性を感じています。卒業後は進学や就職、及び福祉の利用など進路は多様ですが、近年、特別支援教育に関しては、学校が就職を推奨することが多くなっています、現実に高卒の就職者は増えていますが、その後の支援の細さを見ていると就職には課題が残ります。途中で退職する方のその後の支援はどこが担当するのかが決まっていないからです。
障害のない方は7割以上が高校卒業後に進学されますが、なぜか障害があると学校から就職を指導されます、選択するのは本人なので、主体性をもって人生を考える良い時期だと思いますので、進路に迷いがあるときは「よい福祉」を選ぶことをお勧めします、なぜなら「よい福祉」は、障害者と共に人生を歩むことを業にしているからです。就職時のトラブル、退職された時のリワーク、結婚や親の介護などの相談にも応じることができるからです。
成人後に福祉を利用される方は、障害の程度や将来への思いによって進路の方向性を決めます。生活面に不安のある方は生活介護サービスを、社会参加に課題のある方は、自立訓練サービスを、就職を目指す方は就労移行サービスが用意されています。
これらはステップアップの構成になっているので、障害の程度や状態に応じて選択することができます。
80年を超える人生は意外と長いものです、その間に日々いろいろなことが生じ、あれこれと思いを巡らせることもあります。身近に相談できる安心材料として「福祉」が期待される存在になればと願っています。

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