福祉の命題

このところ大学生と「福祉」や「地域」について話す機会が増えてきました。「福祉」から受ける印象について質問するのですが、毎回”福祉は老人を介護するお仕事“であるとの返答が大半になりますので、それを少し考えてみることにしました。
老人介護保険制度は病気やけがで日常の生活に不自由が生じて、専門相談員から要介護認定をされた方が支援を受けることができるようになっています。これは平成12年(2000年)に制定されましたが、その背景になる理由は、①高齢化による平均寿命が80歳以上に伸びたこと、②一世帯の家族の人数が平均で2.5人になり核家族化が進んでいること、③男女共働き世帯が増えて介護する人がいなくなったことなどがあります。
私の若い頃、昭和40年の世帯人数を調べてみると約4人いましたが、現在は2.5人になっており、50年で1.5人少なくなったことになります。また5人以上の多人数世帯が急激に減少していることもあり、核家族化政策が始まった時代ともいえます。その頃のニュースでは、団地で家電製品をそろえた新婚家庭がもてはやされ、TVドラマでは嫁姑の確執を扱った番組が増え、二世帯同居は苦痛であるとの印象を与えることにもなりました。
政策面では、内需拡大の経済政策を優先したことで、核家族が住宅や家電製品などを購入し売上が伸び、インフラ整備が加速されて高度経済成長期になりました。働き方も会社員が希望され、長距離通勤や残業が日常化し転勤族も増えました。半面、家長制度が希薄になり、地域の祭りや風俗が継承されなくなり、また大規模小売店法の緩和でスーパーマーケットが乱立し、地域の商店や市場が閉鎖に追い込まれ自治会が弱体化することになりました。これらの地域の生活インフラを構成していた文化や資源などの地域力が衰退したことが、結果として少子化を助長し、老人介護や待機児童の問題として顕在化することになってきたと考えられます。このようなことから、老人介護などがいつしか産業になり、「福祉」を総称することになったようです。
次年度の国家予算の社会保障関連は32兆円規模に膨らみ、医療や教育、福祉などに使われることになるのですが、この額がほぼ国債に依存する借金になります。経済成長は社会の重要な政策なのですが、同時にそれを下支えする地域力(社会保障)を維持する費用負担も必要になります。少し以前の日本では小規模予算で賄っていたはずの地域力が経済優先政策を急いだ結果、高い金額を費やすることになったことを知ることも「新しい福祉」づくりには大切なことになります。
老人も子どもも障害者も、そうでない誰もが住み慣れた地域で安心して生きていくことができる国及び地域づくりに取り組むことが、これからの「福祉」の命題だと考えています。
今年もお読みいただきありがとうございました、来年もよろしくお願いいたします。

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