新・価値

6月上旬に奈良では例年と同じように田植えがはじまります。冬に数回土お越しをした田んぼに近くの溜池から水が注ぎこまれます。最近は機械で田植えをするので事前に田んぼの土をフラットにして、苗が水から均等に頭を出せるように植えていきます。1反ほどの田植えが準備も含めて3時間ほどで終わります。私は20年前から市民農園をお借りしているので、休憩がてらに田植えを眺めるのが楽しみになります。それにしても周りの田んぼの持ち主はそれぞれに最新の田植え機を持っており、以前のような歩行型でなく、乗用型でしかも一度に多くの苗を植えることができるものも登場しています。
1年にたった一度のために数百万もする高価な農機具が各農家にあることの不思議さを感じることもあります。誰かに田植え機を一日借りるなり、また依頼することにすれば支払いが緩和され、収穫したお米の価値も高くなると思うこともあります。農家に聞いてみると、なんとなく自分の都合で自分に合ったものを使いたいとの思いが伝わります。農業分野では水源や水路の管理を共有する協働・シェアー概念があるのですが、補助金が付いたものにはその思いが広がらないのかもしれません。
障害福祉分野は本来地域の福祉インフラとして、共同、協働の思いが強くあるのですが、総合支援法の施行依頼、営利企業の算入を許可したことに加えて、支援に対しても成果が数値で分かる内容になりましたので、地域全体の成果よりも、個別の事業所を重視する傾向になり、徐々に営利企業の成果主義が主流になってきました。従来の福祉に経営手法を取り入れることは大切なことなのですが、本来の役割である社会福祉に貢献することも重視する必要を感じています。
ものを所有することの価値観にも大きな変化が生まれています。私の青春時代は、人気の自家用車を持ち、ブランドのスーツを着て、スイス製の腕時計に、芳醇なブランデー・・など、まるでテレビドラマに登場するような「もの」にあこがれがありました。休日は750ccのバイクでツーリングも快適でしたが、現在はバイク業界が低迷し、自動車の所有も少なくなり、廉価なスーツにスポーツタイプの時計で十分、「もの」よりも友人や仲間との時間を重視する傾向が高くなり、通信費、飲食代、遊興費が多くなったようです。
持ち物で自己を表現するよりも、誰となにをして楽しんだか、人間関係と時間の使い方に価値を置くようになることで、企業は大変ですが、いい時代になったとも思えます。

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未来の保証

新型コロナの感染拡大がようやく一段落し、奈良でも新規の感染者が少なくなってきました。専門家によると第2波の感染拡大が予測されるので、まだまだ警戒が必要とのことです。世界では日本の対策がPCRの検査数も少なく、また感染者や死者数の比率もすくないことを不思議であるとの論評もでていて、その理由としては、衛生観念が強い生活習慣が大きく寄与したと言われています。
なぜ日本ではパンデミックの状況で安定した生活習慣を実施することができたのかについては、外国の方にとっては不思議なことだと思います。自粛要請が発令されても諸外国のように罰則規定として違反すると罰金や逮捕されることもなく、日本ではあくまでも自主要請なのでロックアウトや処罰はありません。ただ、この期間に不要不急でない外出をされる方には、他の方から“なぜ”と思われることがあるだけです。
当初、感染リスクは高齢者や基礎疾患があり、免疫力が低い方で、感染すると重症化する傾向があるとの発表でしたが、新型コロナが遺伝子変異する可能性や若者も感染すること、特に有名人の死去が大きく報道されて、ようやく全世代にこの病気の恐ろしさを知らしめることになったと思います。検査を受けることに基準がつくられ、誰もが自由に簡便に受診できなくなったことや治療薬がないことも不安を広げることになりました。
今後、ワクチンがつくられ、治療薬が開発されることになれば、新型コロナも他の病気と同様に感染の怖さは残りますが、治療により回復の可能性が高くなり、死の恐怖から解放されることになります。時折、専門家が普通の病気になり、人類はCOVID-19と共存する時期がくるとの説明がありますが、これが安心につながっていくと思います。
私たちは、新型コロナ騒動から日常生活や職場でも、安心材料として、未来の保証が必要であることを再認識したと思います。病気には治療薬があること、生活では災害や事故の不安が少ないこと、経済的にはセーフティネットや年金が確実に受給できること、仕事では希望すれば定年まで働くことができること、これらの「保証」があれば、不安が少なくなり安心して暮らすことができ、未来への希望を持つことができます。

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新・信頼

このところ新型コロナ対策で成果が出てきていますが、専門家からはその大きな理由が国民性にあるとの指摘があります。日本人は日頃から手洗いやうがい、マスクの着用などに心がけているので、それが諸外国と大きな違いがあるとのことです。私たちは日常的に朝は歯磨きからはじまり、トイレの後や帰宅後に手洗いをし、また就寝前には歯磨きを欠かしません。Stay homeでは在宅を守り、勤務も最低限にして外出の機会を減らすことが最大の感染予防と心得ています。
日本は同じ民族で長い間、家族や集落が協力して日々の暮らしを支えてきました。春には田んぼで田植えをして、秋にはみんなで稲刈りや収穫祭をしてきました。その習慣が受け継がれていたことの素晴らしさを感じています。私が育った愛媛県新居浜市の村では稲刈りの日や秋祭りは小学校が休みになり、近所でお弁当を持ちより稲刈りが終わった田んぼの畔に腰かけて食べたものです。そこで各家庭のこと、年寄りや子どもたちのこと、また嫁いできた方の紹介などもありました。こんな田舎の風習が全国にあり、それが暮らしを形作る土台になっていました。それでも徐々に工場労働が増え、よそ者が入るようになりよき風習が薄れてしまいました。
奈良は昔の風習が色濃く残っている地域で、私が障害者福祉に関り始めたころは、相手を思いやる気持ちが残っていて、関係機関や他の事業所との連携も強くありました。それが福祉制度が成果方式になるにつれて、直近の結果を求める事業に代わってきました。以前のように時間をかけて寄り添う、伴走型の支援ができなくなりましたので、支援の手法と共に“福祉のこころ”について、説明する機会が増えてきました。以前ならば分かり合えたことが今は言葉を尽くして伝えることをしても、それでもなかなか理解が深まらなくなり、徐々に「信頼」が無くなってきています。安心・安全な暮らしを支援する福祉の現場から共助や協働が無くなりかけています。
一方、IT化によるデータサイエンスが広がることで産業に良い影響が生まれ、行政政策も具体的に分かりやすくなると、不思議なことに新たな薄れていた共通認識が生まれ始めています。以前の身近な関係性ではないけれど、相手を思いやるシーンが見られるようになりました。この傾向が新しい時代の福祉に繋がることを期待して、こころと手法を組み合わせた「新・信頼」を作り上げたいものです。

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大局的に

連日新型コロナの状況が報道されています。奈良も29日現在感染者数が80人を超えてしまいました。まだ感染経路が特定できる状況がかろうじて維持されていますが、PCR検査を全県民に実施すればどのような結果になるのか想像するだけでも不安になります。
Stay home週間になり、連休明けまでの期間、多くの国民は自宅隔離状態になりますが、それでも医療や生活を維持する機関や施設は業務を続けてくれています。特に感染の可能性が高い医療機関で働く方たちに、賞賛の気持ちを伝える拍手の輪が世界的に広がっています。
フランスの社会経済学者のジャック・アタリは、これまでの資本主義国家の経済成長は、個人の利己的な欲求がその原動力になっていましたが、グローバル化した時代の今後は国や社会及び他者を思う利他的な気持ちが大切になると述べています。自己と社会のどちらを優先するかの違いですが、これまでは個人の集団が社会として形成された経緯があるので、個人の尊厳が重視されましたが、安全・安心な日々を確保するために作られた社会では、互いに規則を守り、発展させることを第一にすることが重要であり、それを推進することで個人の欲も満たされるとの考えになります。
報道では、コロナ対策に必要なマスクなどの物資や病原菌の遺伝子情報等を自国第一で、囲い込みをするなどの政策がとられているとのことです。このような保護主義的な政策をしても経済活動が解禁され、人の移動が頻繁になると、まだまだ物資や技術のグローバル化が遅れ、十分な対策がとれない地域や国から人が流入して、新たな感染が持ち込まれ、第2次感染が広がることが予測されます。
福祉の基本は“お互い様”に始まり、互いに受容し助け合って生きることです。人と人とが一定の距離を保ち、よき関係を築いて、無理なく長く関りを持てることを目指しています。個人や自国を第一にすることは間違いではないのですが、そこにお互いを思いやる気持ちや順番を大切にすることで、自然に利他的な意識が生まれてくると思います。このような時期だからこそ、身近な地域を考える機会にしたいものです。

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ネットとリアル

奈良県は新型コロナウィルスの感染者が50名を超えました。都会では医療機関が発熱やPCR検査の依頼等が殺到して対応に苦慮しており、また感染予防に不可欠な防護服、マスクや消毒液などが不足しているとの報道もあります。政府の緊急事態宣言の発令後に奈良県も大阪や兵庫から通勤される方の自粛要請が出されましたので、ぷろぼのでも大阪在住の職員は、業務を調整してできるだけ在宅勤務をするようにしています。また利用者からも近隣地域で感染者が出たことから公共交通機関の利用を心配される方もおられます。厚労省等からも障害者福祉施設の運営について、いくつかの通達がきていますので、今後の感染状況を見ながら細やかな対応をしていきます。
このような状況でも就職に向けて多くの方が日々の訓練に取り組まれています。希望される職種や企業に就くことを目標に、ビジネスマナーの習得やPC操作やタイピング、また作業系や農業などの技能の習得を目指しています。福祉は地域の安心・安全を維持する役割があり、医療機関と同様に地域資源になりますので、状況が緊迫してもできるだけ開所して、障害者支援を継続する準備をしています。また通所ができなくなっても在宅訓練ができるように、利用者の自宅のWifiの契約、PCの所有、スマホの活用などを再度確認して、オンラインでの支援ができる体制を進めています。
近年、企業や教育機関ではICTが幅広く活用されていますので、ぷろぼのも1年前から障害者のテレワーク支援を進めてきました。主に障害により移動が困難な方、公共交通機関で多くの方と接することが気になる方、また慣れた生活環境で仕事と休息を安定して取りたい方などが利用しています。
通所と在宅を併用する取り組みは、時間管理や運動などの日常の生活リズムを維持することが大切になります。新型コロナの拡大が終息するまでの間は、通所のみを希望している方も在宅で訓練することになります。当初は戸惑われると思いますので、馴れるために今の時点で体験を進めています。事業所では、訓練中も人の動きを感じることや他の方の話声が聞こえてきますが、オンラインでは課題に集中するのみになり、静かな環境になりますので、オンラインアプリのグループ表示機能をonにして、画面から話し声や他の方の表情を見ることができるようにして、孤独感を少なくし通所のように連帯している雰囲気を作っています。ネットはリアルな対面ではないので、十分ではありませんが人が持つ「幅広い感覚」に期待して、日常を感じてくれる場づくりを意識しています。

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