令和元年

暖冬に翻弄されているうちに、今日が業務のしまいの日になりました。各事業所では片付けと掃除に大忙しでガタガタ、コトコトといつもと違う音が聞こえてきます。毎月2本のブログを「福祉の現場からの報告」として書いていますが、これが今年24本目になります。
令和を振り返ると、1月は、はじまりの新で年のはじまりの思いを書き、同時期に友人が和歌山県新宮市に福祉事業所ぷろぼのくまのを開設したので紹介しました。2月は就職準備性の評価をAI処理で担うシステム開発の経緯について、また就職し卒業される方に送る気持ちを、3月は陽ざしが暖かくなり、のんびりした気持ちを、4月は新年度の大変さを、5月はよもぎによる農福事業を、7月は学会で講演させていただいたので、福祉支援の主体は当事者意識が大切との思いを、また参議院選挙について、9月、10月は大きな洪水で被災された方のお気持ちに寄り添いたいので2度紹介しました。11月は未来の働き方として、通信や情報端末機器が急速に進歩したことから、障害者も障害のない方も新たな働き方が日常になることで、重度障害者もアバター就労で働くチャンスが生まれたことをお伝えしました。
福祉は日常の細かいことを意識し、それを積み重ねることの繰り返しになります。地道な取り組みが大きな羽ばたきになると、日々の体験から得たものを精査して活用しています。障害者の就労支援も数年前までは、障害者は戦力にならないとの評価から、企業も採用に消極でしたが、今は彼らの働く能力の可能性を知り、育成してくれるようになりました。世間の評価を変えることは大変ですが、“必ずはじまりがあり、いつかは成果が生まれる。”ことを信じて活動する気持ちが福祉を充実させると考えています。
今年もお読みいただき感謝いたします。よいお年をお迎えください。

1月「はじまりの新」「ぷろぼのくまの」、2月「就労準備と機械学習」「夢をひろげる」
3月「事前相談が大切」「曖昧な生き方」、4月「障害によっては」「表現によっては」
5月「これからの農福連携」「快適な広さ」、6月「自己申請について」「当事者意識」
7月「せんきょ」「はたけ」、8月「のんびりと」「若者がいない」
9月「災害から」「挑戦的学び」、10月「災害から学ぶ」「未来の働き」
11月「キャリアハイ」「福祉の積み上げ」、12月「分かりやすさ」

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分かりやすさから

今年は暖冬で紅葉の時期が遅く、ようやく奈良公園の奥にある大きなイチョウの木の周りに黄色い葉が広がるようになりました。都会ではジングルベルとサンタが年の瀬を告げていますが、もし24節季だけで暦が作られて、今のようにこの季節を「12月」として示していなければ、その時々の寒さや陽あたりだけが季節の移り変わりの目安になり、季節を意識することに無頓着になっていたかもしれません。奈良の静かな師走も、インバウンドで国籍不明エリアになり、たぶん1300年前のシルクロードをラクダに揺られて平城京にたどり着いた人たちで混雑した風景にタイムスリップした雰囲気があります。
現代は、人の生き方も年齢と共に多くの決まりごとが作られ、例えば、生後何日以内に命名し出生届があり、6か月や18カ月の検診、6歳になると小学校に入学、18歳で選挙権が与えられ、20歳で成人になり喫煙や飲酒が認められます。忙しい人生ですが、障害者も18歳になると障害児から障害者になり、成人向けの福祉制度を利用することができます。20歳になると障害の程度などの要件を満たせば障害年金を申請できるようになります。
このように年齢を数字にして人の成長と社会の関わり方が決められています。その規則はいつのまにか最大多数の方には良い仕組みになり、世間一般に受け入れられ、当然のようにこの手順に沿った生き方が標準になる一方で、それを負担に感じる方も出始めています。人の成長や思いは地域や個人の差があるので、共感し同調できない方もいます。また少数ですが同調したくない方も増え凸凹のある生き方も顕在してきました。教育分野では、義務教育の学校に通学するかしないか不登校になるかどうか、また障害者では手帳を申請するかどうか、さらに手帳を公表するかどうかも選択できるようになりました。
このように個人の判断が尊重されるようになりましたが、移行期にありがちな曖昧なものも残っています。選択肢が増えると、独自に調べて判断できるのですが、比例して責任も増え、また必ずしも選択が最適にならないこともでてきます。自らの生き方について、取り扱い説明者のように数字、文字や画像をSNSなどに公表することもできますが、その判断も個人に任され責任もすべて個人に帰属します。分かりやすさを大切にすることは、「人」がもつ、自然に生きることに繋がるのですが、時期と場所、他者を見極める感覚も発揮してほしいものです。

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キャリアハイから

奈良は“春日若宮おん祭り”の準備がはじまると今年も暮れることになります。寒い毎日が続きますが、障害者は今年度中に就職したいとの思いで皆さん頑張っています。今は就職への意識も変わり、初めて就職する企業をファーストキャリアとして、次の転職に必要なことを学ぶ場と考えている方も多くいます。大企業志向だけでなく職種にこだわる傾向もみられ、主体的に働く意味を考え、希望する業務に就くことができる手順を意識されています。
企業も専門的な働き方ができる方を採用する傾向なので、自然と経験を積み上げることが必要になったようで、積極的に転職を繰り返すことが、キャリアハイとして評価する風潮もあります。またダブルワークの副業も盛んになり、効率的に社外の業務に触れることで力量を確かめ、目的に向けて他流試合に挑戦したい思いもあるようです。
奈良は観光に関連するサービス業の比率が高い地域ですが、徐々に地元の小規模商店や飲食店が減少し、大企業チェーン店が急増しています。システム化やマニュアルサービスが整備され、有名店が画一されたサービスを提供してくれます。スタッフ構成を聞いてみると正社員はごく少数で多くのパート、アルバイトがおられるとのことです。専門性のある正社員が単純業務を担当する人たちを差配する構造になり、彼らを将来の戦力としてどのように育成できるのか、いくつか課題も見えています。
最近、Web上で小規模店のM&Aが紹介されるようになりました。経営不振だけでなく、経営者の高齢化や後継者不足で優良企業の廃業も進んでいます。益々、地元経営者のお店がなくなり、商店街が形骸化して素朴に働くことを希望する方たちの職場が減少しています。福祉は地元でのんびりと親しみながら働く場であり、しかも小規模で起業することもでき、また地域の福祉ネットワークを頼れば、運営法を一から学ぶこともできます。これからの時代に福祉産業は顔の見えるお店づくりの主役になる可能性もあるので、キャリアハイに活用してくれることを期待したいものです。

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福祉の積み重ね

奈良は正倉院展が終わり、金色に包装されたポインセチアの赤が年の瀬の慌ただしさを伝えてくれています。数年前まで奈良の夜は店じまいが早いと言われていましたが、今では多言語の方たちが訪れるようになり夜遅くまで商店街も賑わっています。
障害者の就労支援もこの時期から来春に向けて忙しくなります。利用される皆様の気持ちが前向きになり、日々訓練を受けて成長した自分を見つめる良い機会になります。それぞれに得意な分野を探し出し、就職先を絞り込むようになるので、一段と頼もしくなり、その度に障害者福祉に関わることの感激を覚えています。
最近、障害福祉への思いや支援の仕組みを多方面でお話する機会をいただくようになりました。その効果もあり、多くの方が施設に見学にお越しいただくようになりました。一般就労を目指す就労移行事業では訓練プログラムの内容や期待する成果を体系的に説明し、また実業務で働くことを実感できる就労継続事業では、農業や製造業などの既存の業務から、パソコンを活用したデータ入力や制作及び未来型の遠隔ロボット制御やAIを活用した福祉支援など新たな仕事も紹介しています。
このような活動が循環して、全国の福祉関係者から講演依頼をいただき、6月から東京、大阪、名古屋、広島、宮崎にお招きいただきました。また11月16日、17日は「全Aネット就労支援フォーラム」で仙台にお伺いして“健全なA型事業を目指して”をテーマに、福祉事業の現状と未来図とそれを担う職員の育成法について講演をさせていただきました。
15年前に障害者福祉に出会い、奈良県内の福祉施設を見学させていただいき、障害者の位置づけがあまりにも受け身で画一的あることに疑問を感じて、私のようなものでも何かお役に立つことがあるかもしれないとの思いで始めた福祉事業が、年月と共に体系的にまとまりを持つようになりました。そこで得た小さな知識や経験を積み重ねてきたことが皆様にお話しできるものに育ってきたと実感しています。
今までの福祉支援の積み重ねにより、新たにテレワーク就労やアバター就労として本格的に始めることができました。日々の活動がさらに未来の福祉の可能性を広げることになります。これからも皆様のご理解とご協力をお願いいたします。

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未来の働き方

いよいよ正倉院展が始まり奈良の秋本番です。1300年を超えて宝物が管理され、現代によみがえる姿に、奈良時代にこれだけ精度の高い工芸品を作る技術があることの驚きと感動が湧き上がります。
障害者福祉の分野も日々、あれやこれやですが制度としては2年後に大きな改定がありますので、そのための検討会等が実施され、その報告が厚労省のHPに掲載されるようになりました。基本的なことになりますが、福祉制度に民間企業と同様の成果主義を取り入れるかどうかについてです。前回の改正で、福祉事業所が利用者に支払う工賃額や企業就職した人数によって、国から支給される支援費額を決める成果判断が示されました。
平成18年に障害者自立支援法が制定され、のちに総合支援法になりましたが、その趣旨は、障害者も働き経済的に自立した生活ができることになりますが、福祉関係者はそれを実現できるサービスを提供するようにとのことです。この具体的な課題として、支払う工賃の向上や就職者数が対象になりました。しかし今でも長く障害福祉に関わっている福祉事業者では、シェアの概念が一般的です。事業所で働き得た利益から工賃が支払われるのですが、多くは総利益を利用者数で割り均等に配分しています。長く働く方も、少しの時間しか働けない方も、また生産能力が高い方も低い方も同額になっています。
民間企業では、組織があり、役職が決められ、業務が分担され、個人や部署の成果に応じて利益が配分されますが、福祉事業所の利用者は、組織も役職もないのが一般的です。主な理由は障害の程度にあります。障害認定が働く能力に準じてはいないのですが、障害によっては働くことに制限が加わることがあります。常時通勤できない方、特定の作業ができない方、安定して長時間業務を遂行できない方、文章や数字などの理解に課題がある方等、障害特性と労働との関係は多様になります。またその日の状況によっても働く能力が変わることもあります。
このようなことでシェア概念が定着したのですが、新たな制度ではその考えを尊重しながらも、個人やチームでは、相互にできないことできることを補完し、協力することで生産性を高めることができるとの見解です。障害者福祉の就労支援は個々の障害特性を正確に理解し、それに応じて業務や時間、職場環境などを決める必要があります。この働き方が未来の日本の働き方になるような気がしています。少子化、IT化で個人の尊厳や思いが主になると企業に合わせた働き方から、労働者に合わせた働く環境を提供することが企業に求められるようになります。
障害者福祉の就労支援の現場にはその可能性に取り組んでいる意識が生まれています。最近、ぷろぼのに見学に来られる方が増えたのも、このような気付きがあるのかもしれません。

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